【BARISTA STORY】深堀絵美 Vol.3




World Brewers Cup 2018で世界一となった深堀絵美さんのロングインタビュー。
最後に、忘れられないコーヒーの体験と、今後の事をお伺いしました。


ー今までで忘れられない、絵美さん自身のコーヒー体験はありますか? 
 
まずは一番初めのカプチーノ
「イチゴの味がするよ」って言われて、本当にイチゴの味がしたんですよね。
何もわからない状態でポンって渡されて、本当に衝撃的でした。
あの気持ちを忘れないように、毎日仕事をしようと思います。
もう1つは、大会で使ったブラジルのLaurinaを飲んだ時。
あのカプチーノに似た衝撃を受けました。
2018年の8月頃、大会で使う豆を探していたのですが、自分の中でしっくりくる豆がなかなか無くて。
既に150種類ほどカッピングしていて、行き詰まってしまっていたんですよね。
そんな時に共同経営社のマシューがブラジルに行って豆を貰ってきたんです。
最初は、「えー、ブラジル…?」って。笑
パナマや、他のいろんな豆とブラインドでカッピングしたんです。
飲んだ時の衝撃が、すごかったです。
もう、言いようの無い。いまだにちゃんと言えないんですけど、なにこれ!って。

 

ブラジルと言えば、チョコレートっぽいって思っていたんですけど、全然そんなことはなくて。

ブラジルだから。ゲイシャじゃないから。って、そんな事は関係ない。あぁ、もっと精進しないとなぁ。と思いました。

カップをとった瞬間に、「この豆!」って決めましたね。

なかなか惹きつけられる豆に会えず、焦って、どうしよう、という気持ちがなくなりました。

大会の豆を選ぶ時、私は少しずつ頭に入れて感覚と感情がマッチする、"感覚的なもので惹きつけられる豆"を選んでいます。

これから何ヶ月も一緒にトレーニングしていく中で、毎日おいしい訳じゃないから、信頼できる豆に会わないと、続きません。

 

ー印象的だったお客さんとのシーンはありますか?

沢山あります。バリスタになって良かったなと思う瞬間です。

あのイチゴカプチーノの衝撃みたいな事が、ありがたい事にMAMEでも起こっているんですね。

スイスは、ワインの製造も盛んで、舌が肥えている人が多いのですが、その割にコーヒーの世界が小さくて、スペシャルティコーヒーに馴染みのない人が多いんです。

そのような人たちを少しずつこっちの世界に引き込んでいくのが好きです。

最初はブラジルのパルプドナチュラルを飲んで、次の日はエチオピアのナチュラル。3日目、4日目ってステップを少しずつ。

砂糖を入れてしかコーヒーを飲めなかった人が、気が付いたら砂糖なしで飲んでいたりする。

そういうのが毎日あります。彼らが好きなものだけじゃなくて、視野を広げてもらえたのが嬉しいですね。

 

ー絵美さんの次のチャレンジは何ですか?

まずは2021年のWBC。(絵美さんはスイス代表として出場する。)

このアテネでのWBCで、焙煎所があるMAMEとして初めて世界の舞台に上がります。

MAMEをどこまで前に持っていって、MAMEがやっている事を表現できるかなって。

"私の"というより、マシューと、一緒に働いている10人のバリスタと、"私たちの"という風に持って行けたらいいなと思っています。

 

もう1つは、お店を拡張して、コーヒーだけでなくナチュラルワインをやろうと計画しています。

ナチュラルワインっていろんな味がするんです。コーヒーのように、コンビネーションできたらな、と。

MAMEでは、コーヒーがウィール(フレーバーが輪っか状のチャートになっている。下図参照)になっていて、チョコレートがいいですか、フルーティーがいいですかとお客さんと会話しています。それと同じ事をワインでもしたいと思っています。

ワインのことも噛み砕いて、酸味がある、甘みがあるのがいいとか、ファンキーなものがいいとか。

楽しみです。未知の世界!

               MAMEで使われているウィール



深堀絵美
MAME(スイス・チューリッヒ)
World Brewers Cup 2018優勝
Swiss Barista Championship 2020優勝