【BARISTA STORY】深堀絵美 Vol.2



World Brewers Cup 2018で世界一となった深堀絵美さん。
スイス代表の絵美さん、もちろん生活の拠点もスイスのチューリッヒ。
どのようにして、1人の女性がスイスでコーヒーと出会い、バリスタになり、世界一になったのか。
Vol.2では、絵美さんとコーヒーの出会いや競技会のことを話していただきました。

会社員から、バリスタへ。


ー 絵美さんがコーヒーにのめりこんだきっかけは、何ですか?
 
スイスで会社員をしていた時に、たまたま、その年のスイスのバリスタチャンピオンが世界大会の練習をしているところに居合わせたんです。
その人のカプチーノを飲んで、あぁ!!私もやりたい!!と思いました。
当時私は旅行会社で4年間働いていて、スペシャルティコーヒーという言葉すら知らず、コーヒーは好きだったけど、なぜ好きなのか、何が好きなのか、というのは分かっていませんでした。
「これイチゴの味がするよ。エチオピアのナチュラルだよ。」とカプチーノを渡されたんですけど、その意味が分からず、「オーガニックですか?」って聞き返して。
「違うよ笑 もっと勉強しな」といわれました。
そして、彼女のトレーナーが「興味があれば、来たらいいよ。」って言ってくれたんです。
それから半年くらい、会社が終わってから毎日焙煎所に通っていましたね。


ー焙煎所ではどんなことをしていたんですか?

ある時はカッピング、ある時はマシンに触れたり。秒数を測りながら話すなど、仕事が終わった後、半年間ひたすら練習していました。

楽しかったですよ! その時が一番楽しかった。

私はすごくラッキーで、いろんな方のおかげで、バリスタになる前に大会に出たんです。
そして、会社員のまま、スイスのバリスタチャンピオンシップで優勝しました。


ー 初めての世界大会(シアトル)は、どうでしたか?

このシアトルはターニングポイントになりましたね。
他の競技者たちのプロフェッショナルな、ピリピリした感じが、分からなかったんです。
それを感じた時、あぁ、プロの世界にいるんだな、って自分を恥じちゃいましたね…。
もちろん私は頑張ったんですけど、頑張って行けるような場所じゃないから。
そこに、ポンってきてしまって。私なんて、まだまだだ。と感じました。
ただ、"楽しい"だけでやっていましたから。
でも、皆さんが優しくて、各国のチャンピオンたちが会場で普通に話しかけてくれたのがありがたかったです。


ー 絵美さんのコーヒーとの向き合い方がハッキリ変わった瞬間ですね。
 そもそも、なぜ競技会にチャレンジしようと思ったんですか?

私にとって、競技会は学校のような感じです。

課題を与えてもらって、それと向き合って、自分のために時間を作ってくれているジャッジ達の前で10分、15分パフォーマンスするという、課題提出です。すごく勉強になります。
自分のやりたい事と、知りたい事と、勉強したい事が一緒にできる。
軽い気持ちで挑戦し始めました。
逆にいうと、競技会しかなかったんです。
もっと勉強したいと思った時、競技会のほかに思いつきませんでした。


ー この後いよいよ絵美さんは会社員を辞めてバリスタになるのですが…。
    異国の地で、安定した仕事を辞めてスタートを切るというのは、大きな決断。きっかけは何でしたか?

私、あまり考えないんですよね。やっちゃえ!! ていうのが半分です。
もう半分は、やらなかったら後悔するから。やってみてダメだったら戻ればいいかなって。
会社員は安定していましたけど、自分の時間を持て余していたところがあって、そんなタイミングでコーヒーに出会ったんです。
怖いのはもちろんありましたが、良い意味での緊張感でしたね。
屋根があって、ご飯が食べられて、楽しく生きられたらいいって。
何も考えていないですよね! 人生は一回しかないので楽しもう、根本はそれです。

でも、仕事を辞めてバリスタになって半年で、働いていたカフェが無くなっちゃって。
それで、マシューと一緒に、「作ろう!! 」と。
こうしてMAMEという店ができました。


ー 絵美さんは、ブリュワーズカップ、バリスタチャンピオンシップと2つの競技会に出場されていますが、違いは何ですか?

今までにブリュワーズカップが2回、バリスタチャンピオンシップは3回出場しているんですが、決定的に違うのは、バリスタは臨機応変にやる、ブリュワーズは1つの事を極める。あの3杯、それだけ。
多分ラテアートと似ていますね。隠せない、一本勝負です。
できない事をやって、できるようになりたいな。と思いますね。
チャレンジです。



さまざまなチャレンジを心から楽しんでいる絵美さん。
新しい何かに踏み出すのはとても勇気がいる事ですが、緊張感も全部ひっくるめて楽しんでいる絵美さんの姿に、背中を押されるようでした。
興味があるけど、踏み出す勇気がない。と思っている方、「人生は、一回しかないので、楽しもう」と、絵美さんが言っていますよ〜!

Vol.3では、絵美さんの忘れられないコーヒーのシーンをお話しいただきました。
次もお楽しみに。

深堀絵美
MAME(スイス・チューリッヒ)
World Brewers Cup 2018優勝
Swiss Barista Championship 2020優勝